LEMON AND MAGAZINE

SUMMER READING

前田エマさんの初めてのエッセイ集
『過去の学生』が
この初夏、上梓されました。
エマさんの体験を通して
自分を大切にするためのヒントが見つかる
1冊です。

前田エマさんに初めてお会いしたのは、今年の2月。大掛かりな撮影にモデルとして弟さんと出演していただき、インタビューも行った。雑誌やWEBで見ていた写真から勝手に抱いた“可憐で、物静かで、聡明で”というイメージを覆す、とてもユニークで破天荒な人柄、そのギャップに魅了され、もっと彼女のことを知りたい、と、このエッセイ集の発売を心待ちにしていた。

『過去の学生』は、エマさんが小学生の頃から、30歳での韓国留学、大人になってからの習い事まで、「生徒」としてあったときのエピソードに、旅先での出来事や、家族のことを交えて綴った、初のエッセイ集だ。美しい過去だけでなく、寂しさも、恥ずかしさも、気まずさも、罪悪感さえもさらけ出す。こんなにまっすぐに人生と向き合っていると、たいそう生きづらいのではないか、といらぬお節介を焼いてしまいそうなのだけど、心配はご無用なようで。独特のユーモアや、チャーミングなスルースキルで乗り越えてしまう(ように見える)、彼女のカラッとした語り口にむしろこちらが救われる。

自分の心の中に生まれた違和感を決して見過ごさず、解読しようともがくこと。解読できなくても、できないままの自分を認めること。その強さを、この一冊を通して学ぶ。それは自分をないがしろにせず、大切に扱うことの第一歩、最高のセルフラブの方法なのではないだろうか。

装丁は脇田あすかさん。装画・挿画は坂巻弓華さん。
表紙の帯文を担当したライター・武田砂鉄さんも気に入っているという帯裏の短い言葉に、エマさんのチャーミングなユーモアが光る。

前田エマ(モデル・文筆家・ラジオパーソナリティ)


1992年神奈川生まれ。東京造形大学在学中にオーストラリアへ、30歳のときに韓国へ留学。小説集『動物になる日』(ちいさいミシマ社)、韓国カルチャーを案内する『アニョハセヨ韓国』(三栄)に続き、今作が3冊目の著書となる。

『過去の学生』(ミシマ社)
前田エマ 著 
¥1,980 発売中